特別養護老人ホーム開設にあたって
特別養護老人ホーム開設にあたって
社会福祉法人かなえ会は、ショートスティ、居宅介護支援事業所を併設した「特別養護老人ホームかなえ」を開設する運びとなりました。同じゾーンに既存する「医療法人将優会クリニックうしたに」は介護・福祉と連携しながら、在宅医療を率先し、また救急医療告示施設として「地域の健康ステーション」の役割を担ってきました。「特別養護老人ホームかなえ」を中心とした新しい施設は、既存の有床診療所やグループホーム、デイサービスとともに、密な連携のもと地域のニーズに応えながら質の高い医療・介護を提供することで、住み慣れた地域で尊厳ある暮らしを続けていただけるようスタッフ全員で支援して参ります。「医療なくして介護なし、介護なくして医療なし」、医療・介護双方に関わる多職種が連携しながら、地域に求められる理想郷として、皆さま方の安心・安全を守って参ります。
特別養護老人ホーム開設の想い
これからの医療と介護を考える上で欠かせないのが「2025年」というキーワードです。誰も見たことのない超高齢社会であり、これを支えるために必要な医療・介護の連携体制の整備が急務であります。
急速な高齢社会の到来によって、今後の高齢者を医療のみで支えることは困難であり、介護の分野の人たちに支えられることで、はじめて医療は活かされます。
常々「医療なくして介護なし、介護なくして医療なし」と考えており、多職種の連携のもと、利用者中心のケアを提供できる体制を構築しなければならないものと考えています。
○二つの大きなテーマ・・・
(第1)
人生の幕引きを迎える終末期の際まで、住み慣れた地域でその人らしい尊厳ある暮ら しをしていただき、最後まで口から食べていただきたい、そのためには何が必要で、 どのような専門職が関わるべきなのか・・・
(第2)
精いっぱい人間らしく生きて自然な最期を迎える、いわゆる「自然死・平穏死」とそ れを支援する看取りの提供の在り方。
※自然な看取りも含めて高齢者の終末期における選択肢について、医療者の説明も、また説明を受ける利用者・家族の理解も十分になされないまま、双方が納得した平穏死が迎えられていないというのは大きな課題であります。
家族との信頼関係の構築のために医療者である医師は、利用者や家族から見てわかりやすく納得でき、安心・安全で、生活の質にも配慮した医療を実現する視点や、質が高く効率的な医療を実現する視点をもつことが特別養護老人ホームでの医師の大切な仕事・役割です。
東日本大震災が教えてくれたのは、「地域における生活」であり、必然的に増えていくお年寄りの皆さんの「真に豊かな人生」を支えるには、医療の介入、災害に強い工夫が必要です。
特別養護老人ホームの役割について
特別養護老人ホームでは、地域での尊厳ある生活を支え、常日頃から医療と緊密な連携をもち、 定期的なチェック機能を図ることで、その人の有する能力に応じて自立した日常生活を営むことができるよう、「24時間対応の医療の提供・介護サービスの充実強化・予防・住まい・生活支援サービス」を切れ目なく提供する環境を整え、「医療から介護へ、また介護から医療へ継ぎ目のないサービス」を提供し、「地域包括ケア体制」の一翼を担っていきたいと思います。特別養護老人ホームにおける「看取り」について
高齢者が住み慣れた場所で生活を送る「地域包括ケア」において欠かすことができないのが、「看取り」という考え方であり、「生活を支える地域医療の充実」が必要で、「看取りに至るまでの医療の充実」「医療・介護の円滑な連携」は極めて大きな課題です。もちろん人生の集大成の時期に、救うことができ再び、元気になれる急性期の疾患を患う方々には入院ベッドを持つ救急医療告示施設であり、隣接している私どもの病院で、適切かつ十分な医療を積極的に提供し、一方、加齢、いわゆる老衰やがん疾患など、もはや延命処置を必要とされない方々との住み分けをしっかり行って、人生の最終章に寄り添い、その人らしい尊厳のある生活を提供できる場所として、また利用者・家族・医療者が一体となって満足できる「看取り=満足死=自然死=平穏死」が提供できるような施設を目指して特別養護老人ホームを設置したいと考えております。
医療と介護の連携について
医師となってこれまでの26年間、終末期ケアやホスピスに関わり、またクリニックを開業して約15年間、230人を超える方々の看取りに寄り添ってきました。平成18年にデイサービスとグループホームを、平成19年には居宅介護支援事業所を開設しました。 在宅や施設でのたくさんの看取りにかかわらせていただいた経験の中から、在宅医療を率先する医師として、また、介護保険制度発足当時から宮崎市や宮崎県内で働くケアマネジャーのまとめ役として、さらにはケアマネジャー資格をもつ医師としての視点を持ちながら、地域と連携し、さらに認知症サポート医として地域の医療や介護に取り組んだ実績を、この恒久の地で「介護と医療の連携の模範」となる礎にしていきたいと思います。特別養護老人ホームの運営面ついて
質の高い介護サービスを継続的に提供できるためには、「人材確保」が重要であり、これまで医療法人で運用してきた「介護職員処遇改善制度」や「退職金制度」を引き続き活用し、処遇改善に努め、さらに、医療法人が培ってきた理念を継承できるよう、核となるユニットリーダーを移籍し、各ユニットに「ケアマネジャー資格」を有する職員を配置、利用者・家族との密な関係を構築した、きめ細かなケアマネジメントを行う予定です。特別養護老人ホームは「生活の場」であることから、家庭に近い居住環境のもとで、一人ひとりの生活のリズムを大切にしたケアを提供するため、「人間の尊厳とは?」ということを常に意識し、個人差をできるかぎり受け入れたいと考えます。例えば、食事時間や内容の柔軟性、夜間入浴の取り組みなど、衣・食・住・楽しみ・家族との交流会など、暮らしの基本の継続を支えていき「安心した生活」を提供し、施設職員が「自分が入りたい」「自分の家族を入れたい」と思える環境作りを目指したいと思います。
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